ミシンで着物

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ミシンで着物 綿・麻・ゆかた

ミシンで着物 綿・麻・ゆかた

着物が好きで、大学時代は大学へ行く以外ほぼ毎日着物で過ごした年もある。
きっかけは、高校時代に母の手持ちの、珊瑚色の鹿の子絞り地に裾に絞りの花模様のある羽織と、薄紅梅色の源氏車模様の江戸小紋の着物を見たときだった。
それまで、子供の頃から私は「女の子はピンク」と決めつけられるのが嫌いで、何か買ってもらえるとなると水色や、大好きな黄緑などを選んでいた。
赤も好きではなかった。
ピンク系の色で好きだったのは、正しく桜の花びらの色だけ。
あの当時はまだ、洋服にしろ何にしろ、突拍子も無い色よりも「売れ筋」の色だけを出す事になっていたのか、私が好きだと言うような色の洋服はあまり無かったように思う。(なぜか、家電や食器に関してはある意味今より凄まじい色というか、模様がついていたが・・70年代頭の話である。)
そんな頑固なピンク嫌いをひっくり返していきなり大好きな色にしてしまったのが、あの二枚だった。
それ以来、着物熱はとどまるところを知らず、独学で和裁本で縫い方も学んだ。
母親は着物など私が小学校に上がってからは正月に2、3度と、親族の結婚式に黒留袖を着るぐらいで、喪服も持っているくせに数ある葬式に一度たりとも和装の喪服で出席した事は無い。

独学で和裁を学ぶ際に参考にしたのは、自分が通う学校の付属大学の家政科の教授が大昔に記した本で、それは私の母が私が生まれたあたりにやはり和裁を勉強しようと購入した物の全く手つかずとなった物が天袋に眠っていたのである。

しかし、この本は戦前を知る人が書いただけあって、当時としては希薄になった「生活着としての着物」のにおいがあふれていた。
この本を手にした当時は、今のような和服ブームが起きる前で、ようやく、大橋歩さんが「どきどき着物」問ういう写真エッセイ本を出したりした頃である。
カビが生えたような、金持ちのおばさん向けのき物の本か、文豪の随筆以外に着物に触れられる本など当時はそれくらいしか無かった。
そこには、自分で工夫する「おしゃれ」についての工夫の情報は皆無であったと言っていい。
着物は呉服屋で、絹100%の、訪問着か振り袖を買うもの、小物も何もかもどんなに高くても呉服屋で買うもの、呉服屋に金を落とせ、と無言で洗脳しているような物であった。

しかし、戦前をくぐり抜けた教授の執筆した、ページの黄ばんだ和裁本には、火鉢に鉄瓶を賭けた蒸気で湯のしをする方法だの、様々な幅の洋服生地で着物を作る際の要尺と、柄合わせの方法などが事細かく記載されていたので、私は呉服屋の洗脳にははまらずに済んだのである。
しかし、半世紀近く前に初版がでたような実用一点張りの本や、それと似たり寄ったりの和裁本、もしくは「美しい着物」のような、若い学生が眺めても手が届かないようなカタログでしかないような雑誌だけではつまらないなあと、ずっと思っていた。

しかし、時代は変わった。
あれよあれよと言う感じに、若い、大富豪ではない普通の女性が、普通の暮らしの中で着る和服の暮らしについてエッセイをどんどん書くようになり、着物ブーム、古着ブームが起こり、若い女性向けの実用のアイデアにあふれた楽しい着物雑誌が何冊も発刊されるようになった。

プレタの着物も市民権を得て、「日本人の和裁師に縫ってもらったのでなければ着物ではない」などという戦後作られた常識も、過去の一過性の流行でしかなくなってしまった。
そして、とうとう、「着物を縫う為の本」が、「洋服や編み物の本」と同じレベルのおしゃれさ、気楽さを備えて売り出される時代になったのだ。

本屋で「ミシンで着物」を見つけたときの、「ああ、とうとうここまできた」と言う思いを今でも覚えている。
この本に掲載されている着物の柄や、取り合わせについては好き嫌いが分かれるだろうが、決して一時はやったような、「奇をてらっておけばカッコいい」と言うような浅薄なものではない。

多少ゴスロリにも通じるような「やり過ぎ」な髪飾りなどがついていても、選ぶ物を大人しやかにすれば十分普通のおしゃれとして通用する。
「着物に帽子と言うのもありなのね」
「着物に、帯留め替わりにブローチでもいいのね」
「着物に、帯揚げの代わりにその辺の布地を切っても、レースを使ってもいいのね」
半襟は好きな布を切ったり、半々に縫い合わせてもいいんだ」
などなど・・

巷にあふれる、やすっちいセットの着物に、化繊の不気味な色のレースをぐるぐる巻きにする汚らしいき方が定着してしまって久しいが、この本に掲載されているような取り合わせであればまだ見られる物だったろうに・・。

この本には、一重の着物と半幅帯、つけ帯の作り方が、型紙付きで掲載されている。縫い方に至っては写真で1工程ずつ丁寧に説明してあって、これで作れないと言う事は無いだろうと言う親切な作りである。
着付けの方法もかわいいイラストで説明してある。
なんと言っても、眺めていて楽しい。

いきなり絹の着物を、それも何十万もするような礼装や正装を購入するなどナンセンスであるというのがようやっと常識となった。
とりあえず着物をきてみたい、でも呉服屋に入るのはまだ怖いし、スーパーの吊るしの浴衣は気に入った物が無い。
デパートの浴衣ときたらひとそろい10万近くするじゃないか・・
と言うのであれば、とりあえずこの本を買って、ここに書いてある通りの洋服時を購入し、ひとそろい作ってみてはいかがだろうか。



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