ニッポンの評判 (2)

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ニッポンの評判―世界17カ国最新レポート (新潮新書)

ニッポンの評判―世界17カ国最新レポート (新潮新書)

3章「誤解と幻想を超えて」−ノキア社員が目撃した「傲慢な日本人」(フィンランド
−靴家さちこ

著者の靴家さんは1999年にノキアジャパンに入社され、退社後フリーライターをなさってる方とのこと。
フィンランド在住、永住予定(紹介文より)

これもとても興味深い話だった。
そもそも、日本に限らずアジア諸国で北欧スカンジナビア三国スウェーデンフィンランドノルウェーの歴史や、政治状態、経済や産業、言語、文化について詳しい人がどれだけいるだろう。

国名は3国とも有名で、聞いた事はあるし、地図上ではスカンジナビア半島がわかりやすいから、ヨーロッパの北にあるのはわかるが、3国の国境だけしか書いてない地図に正しく国名を記載できる人もあまりいないと思う。

「〜国と言われて連想するのは?」と言う国のイメージを外国人に尋ねるのはよくやる事だと思うが、
3国のうち特定の国のイメージを上げられるのはその国によほど関心のある人に限られるのではないか?
スウェーデンだけは、歴史上有名なマリーアントワネットの恋人の国として
「フェルゼン」=「スウェーデン」と一般人にも有名かもしれないが。

これら3国のイメージとして、北欧に興味の無い日本人でも挙げる項目と言えば、「北欧」「森と湖」「オーロラ」「白夜」「バイキング」(3国それぞれにいた)「ノキア」(フィンランド)「ムーミン」(フィンランド
くらいではないか?
ちょっと詳しい人なら、「北欧デザイナーズ家具」とか、「マリメッコ」(フィンランド)「北欧パイン」
(パイナッブルじゃなくて木材ですよ。松の木。)「スウェーデンハウス」「ロッタちゃん」(スウェーデン)とか・・

でも、ノキアにしろ、マリメッコにしろ、会社名と北欧3国のうちどこか、と言う認識はあっても、
「この国」と特定するには調べないとわからないと言うのが日本では普通だと思う。
まして、国民性など想像もつかないと言うのが正直なところだ。
昨今の北欧家具流行で、インテリア雑誌は北欧特集の山だが、これらは家具についてのみの情報で、
国の歴史や風習を詳しく説明する物などほとんどない。
まあ、どんな国だって付き合いが無くて遠方にあるのにはじめから国の情報がなだれてくる方がおかしいし、北欧家具やノキアが突破口となって周辺文化に興味が持たれて行く過程にあると言っていいのでは、と思う。

このレポートは、ノキアジャパンの駐在員として派遣されたフィンランド人についての考察が主なのだが、フィンランド人曰く、フィンランド人は大変謙虚で、日本人は謙虚な民族と聞いていたので、自分たちと特別に通じ合う物があるに違いないと思い込んでいたとのこと。

ところが、著者が記すその後のフィンランド人の日本人と日本の社会に対する発言からは
「お宅の国の謙虚って言葉は日本で言うとこの傲慢では?」と言いたくなる話が満載なのだ。

レポートのタイトルそのまま
「日本人は傲慢だ」「日本人は自己中心的だ」とフィンランド人のたまう。

なぜか?

「自己中心的」の例から
・新宿にホームレスがいるのに、日本人はそれをどうにかしようとしない

「助けてあげようと思わないの?」というフィンランド人に、(生まれて初めてホームレスを見たそうな)
著者が「個人の力では何もしてあげられない。小銭を恵んでもお酒に化けるだけ」と答えたら、
「世にも冷たい物を見るような目で睨まれた」らしい。

彼は日本に来て生まれて初めてホームレスを見たのだそうだ。
フィンランドが国策として企業育成を始めたのが80年代、実を結び出したのが90年代中頃で、
それまでは農林業、漁業くらいしか産業のない貧乏国家で、一部特権階級しか海外旅行なぞした事無かったのだろう。
どんな国でも豊かになって行く過程ではそんなものだし、日本人だって初めて海外の情報があまり無い状態で海外に出始めたときはカルチャーショックはいろいろあった。

著者は、「国家予算の4分の1が社会保障に当てられ(中略)ホームレスには食事付きの変える場所がありる。そんな国の人の目にはホームレスを「見殺し」にする日本人が、残酷でエゴイスティックに移ったのだろう」
と書いている。
私はホームレスに関する著者の意見に賛成だが、その理由も一緒に言ってやれば面白かったのにと思う。
(まあ、仕事の途中じゃ面倒なだけだろうが)
そもそも、フィンランドと日本では気候条件自体が違うではないか。
「見殺し」って、ほんとに死にそうな人間が道に転がってれば保険に入ってもいないのに病院にかかれる。
(大問題になってるけど)
フィンランドの気候では真夏以外に家の外で寝てたらもれなく凍死するだろう。
自由に道ばたでホームレスなぞやらせられない。そんな事をしたらもれなく死亡だ。
日本でも、行政がホームレス用の避難所を用意している。
けれど、日本人がホームレスの人に対しておまえら家なしなんだから避難所で暮らせと強制する、なんて事はできない。
日本はごく最近まで強固な地縁社会で、現在のような弱肉強食の切り捨て社会になった経験が浅い。
勤勉な国民性は人の金で遊んで暮らすことを恥と思い、一時的支援を受けたら健康なら仕事を選ばず働いて税金の世話になるなど言語道断、恥ずかしいという価値観がありがたい事に一般的だ。

さらに、このフィンランド人は通勤途中の日本人が皆マスクをしているのをみて、「人に移さないためにマスクをするんだよね♡」といって、作者に「そういう人もいるけど、基本的には自分が風邪を引かないため」といわれ、またまた「なんて利己的なんだ」と軽蔑する。
小学生か、と言いたくなる幼稚な精神構造である。
自分が寒いからとマフラーを巻いたら利己的になるのかよ。
アホかいな。

マスクをするのは何のためかといったら、自分のためかつ、人のため。
自宅でマスクをするとしたら、風邪を引いているからだろうし100%自分のためだろうが、風邪を引いている人が会社に出かけるとなったらそれは他人のためでもある。

さらに、この斜め上思考のフィンランド人は日本人が傲慢だという根拠に、自分が日本人に「何のために日本にいらしたの?茶道?柔道?アニメ?」などとと聞かれるのが気に食わないと宣う。
???であろう。

彼氏曰く、
フィンランド人は自国が他人に興味を持ってもらうような文化を持っているとは思わない。だから、外国人がフィンランドに来てくれたら、「こんな何も無い国にどうして来たんですか?」ときくんだ。なのに、謙虚だと言われている日本人は、まるで日本人が外国人から興味を持たれるのが当然のように日本の文化の何に興味があるのか聞いてくる。まるで傲慢なアメリカ人のようだ」

・・・こんな事を発言する人間もどうかしているが、これに反論もせずに感心している作者もいいかげんアホである。
フィンランドに何一つ文化と呼べるような物が無いとは言わない。
しかし、ロシアとスウェーデンという大国に挟まれ、厳しい自然に食料も満足に行かず、貧乏のどん底をなめるようなヨーロッパの辺境の弱小国家と、遥か古代から豊かな文明を誇り、日本の産物は近隣諸国はおろか、遠くヨーロッパまで、信長の時代より貿易の実績があり、当時の大帝国スペインが目とはなの先のアジア諸国を植民地化しても日本には手も足も出ずに「友好国」として頭を下げて貿易をしてもらっていたような国を同列に並べてもらっても困るのである。
アメリカ文化」などと言ったら、フランス人のように「アメリカに文化なんてありましたかな?」でいいが、それでもアメリカにはその国に外国人が興味を持つ物が沢山あるだろう。
(それをして文化というほどのものかどうかはともかくとして、少なくともアメリカ独自の文化といえるようなシロモノかどうかは疑問を抱くようなものがほとんどだ。)
そして、文化果てる土人先進国アメリカと違って、日本はまごう事亡き世界一の文化国家であり、謙遜などしたら逆に嫌みになってしまう。
世界シェア1位で、2位との差が50%もあるような会社が、「我が社はまだまだで」などと謙遜したら嫌みにしかならないのと同じである。
初対面の外国人に、日本人が、「日本の何に興味があって来たの?フィンランドには文化らしい文化ってないもんね〜」などと言ったのならそれはアメリカ人みたいだと怒っても当然だが、もちろん日本人がそんな暴言を吐く訳が無い。

さらには、このフィンランド人ときたら日本人が傲慢であるという理由に自分の会社、ノキアの事を日本人が誰も知らないという事を挙げてプンスか怒っているのだ。

あったりまえじゃないか。
ノキアなんて、日本でシェアいくつあると思っとるんだ。
このフィンランド人はノキア製の携帯電話が世界シェアで一位になった事がうれしくてしょうがないらしく、そんな大企業であるノキアの事を知らない日本人は傲慢だと憤慨する。

ノキアの携帯と言っても、別に技術的にこれと言ったブレイクスルーをノキアがやってのけた訳でもなく、携帯のデザインと構成設計、後はとにかく営業営業で売りまくっただけ。
それがうまく言ったのはひとえに日本の進出を懸念した欧米諸国が日本式の最新通信方式を採用せず、世代遅れの通信方式を(当時は)採用していたからで、日本企業の国内市場制覇合戦にかまけるズボラというか、おなさけでラスボスが出てこないロウワーレベルのロープレで勝ちまくったというだけの話ではないか。
そんな事は多少機械業界に興味のある日本人なら誰でも知っていた事で、ヨーロッパやアメリカの携帯の性能の低さをガラパゴスジャパンの住人はせせら笑ってみていたのだから感心してくれる訳が無いじゃないか。

当時と今とでは状況が変わり、iphonというスマートフォンの登場で当たり前だがノキアは携帯シェアの一位から転がり落ちた。
取って代わったのはサムスンだが、どちらにしても、発売する機械の部品を自前で供給する事も出来ない企業じゃね。

日本企業の恐ろしいところは、企画も、設計も、部品の製造も、組み立ても、営業販売も、ひとつの物をつくる全ての分野を世界最高水準で自国だけで出来るというところなのだ。
組み立ては他国に出しているといっても、特に品質にうるさい、もしくは高価だったり高度な制度が必要だったりする利益率の高い機械はやはり国内製造になる。
アメリカのように、国内でやりたくてもやれる人材もノウハウも無いからやれないのではなく、やれるけど日本人がやると値段が高くなって競争に勝てないから、やらない。
全くやらなくなっちゃうと国内で培った技術がなくなってしまうから、高い人件費をかけても勝負できる高機能製品しか国内ではつくらない事で、国と、企業と、働く人間と、世界一の技術を守っているのだ。
シェアが全く関係ないとは言わないが、「どういう理由でシェアが高いのか」も考えずに、それも携帯電話のような寿命の短い機械ひとつでシェアトップを取ったぐらいできゃっきゃと喜ぶ何ぞ、やはり工業の歴史の浅い国だと思わざるを得ない。
なにしろ、日本という国にはこの世界を支えるありとあらゆる工業製品のおびただしい分野で品質世界一だったり、シェア世界一だったり、品質もシェアも世界一だったりする企業や製品が星の数ほどあるので、たかだかひとつぐらいの製品種目のシェアで世界一になりました、などと自慢して回ったら笑い者である。
日本人が感心するシェアの一番、それは日本でシェア一番という称号である。
なぜか?決まっている、
ぼろくその品質の物しか手に出来ないヨーロッパ人やアメリカ人ごときがほめてくれたところで日本人に取っては何の自慢にも品質保証にもならないからだ。
世界で一番品質にうるさい国民
世界で一番高品質の商品に金を払う国民
は両方とも統計を取り出して久しく日本が世界一である。

ヨーロッパだのアメリカだの日本以外の国で物を売るのは、政府の妨害をのぞくとさして日本人には難しい事ではない。
日本で売っているモデルの型落ちを、機能をしぼって安く大量に人件費の安いところでつくって売りまくればいい。
なぜシェアがとれないかって?
この手の薄利多売モデルをやろうとしたって、ヨーロッパ、アメリカは日本製品に莫大な関税をかけて保護するからだよ。
まあ、フィンランド君、成金よろしく貧乏無産業状態から、IT特化制作の一点豪華主義で多少もうけられるようになったぐらいで一流国になったなどと勘違いしないように。
国の国力、産業の実力というのはどれだけ巨大な産業の裾野を持っているか、どれだけ沢山の分野で研究開発のトップを張るか、ここにかかっているのですよ。
よかったね、早めにわかって(笑)


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