シャンペン・シャワーとサッカーとキャプテン翼と

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

シャンペン・シャワー (第1巻) (白泉社文庫)

シャンペン・シャワー (第1巻) (白泉社文庫)

さてさて、またしても古い本のご紹介ですよっと。

どれくらい古いかって、この話が連載されていた当時、私はたしか中学生だったのだ。

まるっと20年以上昔の本だ。(・・というか、既に30年近くなってるんだ。うわあ)
しかし、話の内容は全く古くなっていない。
この話が連載されていたのは、白泉社のLALAという、現在でも立派に第一線で少女漫画雑誌として売り上げている雑誌で、
しかも現在のように看板作家が夏目友人帳緑川ゆきしかいないような(彼かの の作者はまだLALAにいるのだったか?最近の話は
あまりおもろくなくてみてないんだけど・・)しょぼい状態ではなく山岸凉子だの、大島弓子だの、樹なつみだのがひしめいていた黄金期である。

作者はかわみなみ 氏。

この作家の画風も、ものすごい個性的で、この当時の少女漫画は本当に個性派が揃っていたなあと思う。
現在の作家に個性のある作家がいなくなったとは言わないが、あの当時に比べて漫画家へのハードルが低くなったわりには、特に少女漫画家の画風はどれもこれも似たり寄ったりだ。

さて、肝心のおはなしだが、表題にあるように、なんと、ばりばりの少女漫画雑誌に掲載する連載物だと言うのに、

テーマはサッカー

これがどれだけ当時とんでもない設定であった事か。
上記のアマゾンの本は当然復刻文庫版だが、私はもちろん、連載当時の花とユメ文庫を全巻持っているのだ。
これは買い直しではない、当時発売のもので、あの当時購入した本の大半を手放した中、ずっと持ち続けている数少ない本の一つなのだ。
文庫版のデザインはひどいなあ・・初めて見たけど。
これじゃ誰も買ってくれないよ。

ものすごく思い入れのある本ではあるのだが、なぜ今回この本の事を書こうかと思ったかと言うと、ネットのニュースで、キャプテン翼の作者の高橋さんが、スペインの翼君が所属する?チームの為に壁画を書いて、スペインでその取材を受けていると言うニュースを見たからなのだ。

私はサッカーには何の思い入れも無いが、キャプテン翼のアニメや漫画の黄金期に奨学生、中学生時代を過ごした事もあり、そして白状するなら13巻まではキャプテン翼を持っていたのである。
中学変になったあたりから、私のお気に入りの岬君がいなくなってしまって、話も詰まらななくなり、読むのをやめてしまった。
最近、(といっても結構前か)プロ編が始まったのは知っていたが、ここまで盛り上がっているとは思わなかった(笑)

キャプテン翼は、少年誌の掲載だったので、どこまでもサッカー漫画である。
試合の中で、サッカーボールをけるだけの描写に
「うおーーーーーー」とか
「いけーーーーー」
とか、ごおおおおおおおお!
とかいう、流線とボールの丸と叫び声だけの画面が10ページ続いても、試合の様子だけで1回の連載が終わってしまっても、文句が出ない連載だったのだ。

しかし、かわみなみ氏が発表した「シャンペン・シャワー」は、サッカーがテーマといえども、あくまで少女漫画なのだ。

書いてる内容がひたすらサッカーの試合だけ、などと言う事が許されようはずも無い。
しかも、この話の主人公は

男なのである

少女漫画の主人公に男を持ってくるなんてのは、これまた当時としては異例中の異例だったのである。
オトメンなんて言葉は影も形も無い時代のことですよ、あくまで。

しかも、この話の主人公は、読者と同世代の10代の少年とはいえ、南米のプロサッカーチームにスカウトされてきた選手なのである。
南米なんて、よほどの変わり者でない限り、これまた少女漫画の読者にとってどうでもいいステージだ。

舞台は南米の架空の国、エスペランサ。
そこのど田舎のサッカー少年アドリアン・アレクシスは町の試合で、都会のサッカーチームのオーナーに見いだされ、契約金が安いと言う事でスカウトされるのである。いくらアドルが女顔のハンサムと言っても、どうやったって少女漫画の舞台、主人公の設定ではない。

話全体としては、その後、アドルのサッカー選手としての成長を描く、となるのだが・・
こんな説明ではキャプつばとの差が全然説明できてない。
ここまでの書きっぷりで、私がキャプテン翼に否定的に思われるだろうが、キャプテン翼に限らず、スポコンものの少年漫画と言うのが軒並み私にはつまらないのだ。

今現在はあの手のつまらない話運びで読者を獲得できるとは思わないが、少年スポーツ漫画と言うのは、人間模様、人間の内面、人間関係のドラマの書き込みがあまりに雑、つまらない、幼稚で、スポーツに興味のある人間以外楽しめないようにできている。

かわみなみさんは、単行本の中のエッセイページで、少女漫画雑誌でのサッカー漫画と言う事で一番気をつけたのは、サッカーマニアの自己満サッカー実況漫画にならないよう、主人公とその周りの人間のエピソードを丹念に書き込み、サッカーはむしろ添え物にし、けれどしつこくサッカーの紹介をして、サッカーに興味のない人でもルールを理解し、楽しめるように気をつけたと書いている。
すばらしい。

まさしくそういう漫画に仕上がっている。
かわみなみ氏は、あの時代にワールドカップを観戦にメキシコくんだりまで出かけて行っている筋金入りのサッカーファンなのである。
シャンペンシャワーには、当時活躍した億円プレーヤーが、少し名前を変えて出演している。
アドルノ所属するヴィトーリオの看板プレイヤーの主将は、「ディッコ」というのだが、これは「ジーコ」と言う実在のプレイヤーがモデルだそうな。
この人、確か引退後一時期にほんのサッカーチームの監督やってたらしいですね。

まあ、こういう楽しいお楽しみがあちこちにあって、私のようなサッカー無関心人間には大して面白くなくとも、サッカーファンなら、
うわー!
となるらしい。

うーん、思い入れが強過ぎて、書きたい事が多すぎる。
この作品の魅力について全然書いてきていないのだが、サッカーファンではない私にとってこの作品のすばらしいところ、それは、
1にも2にも、キャラクターの個性と、凄まじい出来のよさのコメディ、それを「サッカー」と言うスポーツをパロディにして表現する斬新さ。

そして色物にしか見えないような話運びだと言うのに、主人公含むその他の登場人物が現実の世界で働く、家庭を持つ、そこで発生する様々な、現実味のある「壁」それを乗り越えてゆく方法がリアルの上にもリアルで、下手なメンターなど持っているより、この本を全巻揃える方がよほどためになる、と言う代物なのだ。

コメディとしては、全盛期のドリフターズの出し物レベルに面白い。(これも平成生まれにはわかんないだろうな・・でも、昨今のバラエティって笑えるものあるのか?テレビ見ないからわからないけど)

学生時代、電車の中でこの本を読んで、笑いをかみ殺す事ができず爆笑してしまったが、学校の友人たち(女学生)はみなそうであったとの事。

この事については不思議なところがあって、大学時代、友人の男子学生にこの本を「すごーくおもしろい」と言って貸したら、「全然面白くなかったし、笑えなかった」とのこと。
かれは、当時はまだ男が少女漫画読むの〜なんて言われてしまう時代であったにもかかわらず少女漫画好きな人で、少女漫画への偏見のせいではないと思う。

ただ、彼の好きな漫画と言うのが、「星の瞳のシルエット」とか・・(知ってる人は知っている)
私はこれも同時代よんでいたが、全然面白くなかった。なんというのか、日本の普通の女の子の日常+恋愛ごっこを描いた話なのだが、典型的ぐだぐだバなし。
とはいえ、これに男子学生がはまる、というのもわかるきはした。
ようは、男に覗く事のできない、「普通の女の子の気持ち」が表現されているところが面白かったのだろう。
どう考えても、出来のいい話ではないんだけどね。

それでいくと、「シャンペンシャワー」は、少なくとも当時、女が覗く事のできない、男の、それも「プロのスポーツ選手」として第一線で生きている「男性」の現実を、丁寧に描いた物語だ。

そしてここに出てくる男性たちは、スポーツ選手だから、などと言うのとは全く関係なく、ものすごーく、カッコいいいいのだ。
「いい男」
この言葉こそふさわしい。

自分の仕事に対する姿勢、家族に対する姿勢、社会で生きて行く上での世渡りの仕方、その中での筋の通し方・・・おそよ少女漫画的ではないエピソードが、現実離れしたコメディの中に隙間無くびっしりと埋め込まれている。

「おすすめ」なんてものではない。
サッカーファンなら、かつてこんな昔に、こんなすばらしいサッカー漫画があったのか、と思う為だけでも買って損はない。

この本を読んだ事がないと言うのは、日本人として生まれてきたと言うのに、その恩恵の最上のものの一つをみすみすどぶに捨てている状態であると断言する。


腹の底から笑いたい肩にもおすすめ!

カッコいい男性にほれぼれしたい人にもお勧め!

女性陣にも、男性陣にも、この本の中のどの人が好きか、なぜ好きなのかを聞いてみたい。

私は、なんと言ってもジョゼが別枠としてくるけど、やっぱりマルロにはぐっとくるなあ〜
りさが、「彼って女から見るとあれこれ手を出したくなるタイプの人」
と言ってるけどものすごく良くわかる(笑)

アンドレは友人としてならぜひ、ってかんじだな。ジョゼもだけど。
アドルは、最後の方、大人になりきったところだと色気のあるいい男になってるが、これを見るとやっぱり、男は女に育ててもらってからでないと食指の動くいい男にはならないのねえ、というのを実感。

お姉様方のせりふ、「いい男はみんな人の旦那」
というのは、ぱっとしない男と結婚して、奥さんが女の目から見ていい感じに磨いたから、って言うのが多分にあるからねえ。


あまりにも文庫版の本が地味なので、シャンペンシャワーの番外編をはっときます。

ダイヤモンド・ガイ (白泉社文庫 (か-4-4))

ダイヤモンド・ガイ (白泉社文庫 (か-4-4))


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ